滋賀県日野町

「桜谷地域農村RMO推進協議会」

主な取り組み

  • JA旧店舗を活用したコミュニティ機能の活性化
  • 地域特産物のブランド化
  • 農用地保全、担い手不足をサポートするための体制づくり

主な構成員

  • JAグリーン近江
    日野北部(桜谷)地区理事・新旧総代
  • 地域内各自治会
  • 地域内各農業組合
  • 農業委員・農地利用最適化推進委員
  • 日野町土地改良区北部委員会

活用した事業

  • 農水省の農村RMOモデル形成支援事業
    (360万円は各分野の基礎調査及び区画整備に使用。事務員の事務費に160万円、その他JA旧支店の維持運営、先進地視察にそれぞれ90万円使用)
  • 中山間地域等直接支

JA旧店舗を拠点に活動を展開。
JAのコミュニティ機能を引き継ぎながら、若い世代の定着を目指す

 滋賀県南東部、鈴鹿山系の西麓にある蒲生郡日野町の「桜谷地域農村RMO推進協議会」は、JAグリーン近江日野北支店の空き店舗を拠点に活動を展開しています。桜谷地区にある15の自治会と15の農業組合、農業委員、JAなどで構成し、住民の意向調査などを踏まえながら、農用地保全、農産物のブランド化に取り組んでいます。

 桜谷地域は住民の高齢化に加え、中山間地で傾斜地が多く、農道や用水路、畔道などの保全が年々困難になり、持続可能な地域の維持に向けた体制づくりが急務でした。JAグリーン近江の組織再編により日野北支店が閉鎖される計画が出たのを機に、地域インフラの維持についてJAや町役場、地域住民との話し合いを重ね、2023年9月に農村RMO協議会を設立しました。

 地域住民の推薦により会長に就任したのは、同地域で水稲40ヘクタールを営む認定農業者の加納文弘さん(65)。協議会発足後、先進事例となる農村RMOへの視察や農地に関する基礎調査を行い、それぞれの課題についてはワーキンググループを設置し、検討しています。

設立総会には町役場やJA、土地改良区、地域住民らが集まった

広報誌やイベントを通じて、日々の活動を住民に発信

活動の拠点となるJAグリーン近江旧日野北支店

 農用地保全のためには、将来的な農業の新規参入や若い世代の定着に向けた取り組みが欠かせません。そこで地域資源活用の目玉として掲げるのが、独自の農産物を使った新たなブランドの創出です。地域ブランドの奥津保米や佐久良川糯を活用した新たな商品開発に加えて、有機栽培にも地域ぐるみで挑戦する方針です。

2023年12月には、日々の活動を地域住民に知ってもらうことを目的に「ちょっと楽しいつどい」と題し、軽トラックに地元野菜を陳列しての即売会や餅つき大会などを開き、約100人が参加しました。今後も地域の文化を伝え、若者に定住してもらうためのイベントを開催する予定です。

キーパーソンインタビュー

桜谷地域農村RMO推進協議会会長 加納 文弘さん

地域の皆さんに農村RMOの活動を「自分ごと」としてとらえてもらいたい

 農村RMO設立のきっかけとなったのは、JA日野北支店の閉鎖です。認定農業者として長年にわたり水稲作を営みながら、地域のつながりの大切さを肌で感じていました。店舗を中心としたコミュニティを今後も維持、発展させることを検討した結果、農村RMOの設立を決めました。

 会長を引き受けてからは、活動に参加してくれる賛同者を集めるところから始めました。桜谷小学校区15集落を手分けして戸別訪問し、活用する国の政策や協議会の活動方針など、イチから丁寧に説明しました。西河正樹(53)副会長の尽力もあり、JAや町役場の協力を得られたことも助けとなりました。

 地域の皆さんから温かい声援があったものの、活動を正しく理解してもらうためには時間がかかりました。政策や活動内容の複雑さも一因ですが、それよりも地域の皆に活動の意義を「自分ごと」としてとらえてもらう必要があったからです。農用地保全だけでなく農産物のブランド化、生活支援など、地域ぐるみの活動を掲げる私たちにとって、この教訓は今後も生きてくると感じます。

 桜谷地区は佐久良川を中心に同じ水系の恵みを受け、美しい棚田の原風景を守りながら、皆が力を合わせて農業を営んできました。JA旧店舗を農村RMOで活用するという前例のない挑戦ですが、地域に根付いた伝統を守りながら盛り上げていきたいです。