富山県立山町釜ヶ渕地区

「釜ヶ渕みらい協議会」

主な取り組み

  • 交流拠点の整備
    カフェ開店/住民イベント/地元産品の直売
  • 耕作放棄地の整備
    市民農園の貸し出し/自然栽培米の試験栽培/農作業体験
  • 農泊施設の整備
  • 新規就農者

主な構成員

  • 釜ヶ渕地区自治振興会
  • 釜ヶ渕公民館
  • 釜ヶ渕地区青年団
  • 立山町社会福祉協議会
  • 農業委員
  • 地域おこし協力隊
  • 白雪農園
  • 横山ファーム
  • 立山グリーンパーク吉峰

活用した事業

  • 農村RMO モデル形成支援事業
    2022年度:200万円/2023年度:1,000万円
    (交流拠点での直売市や買い物支援の実証に440万円、放棄地再生の実証に270万円、空き家を活用した農泊の実証に160万円)
  • 最適土地利用対策
  • 多面的機能支払交付金
  • 中山間地域等直接支払交付金
  • 地域おこし協力隊

住民が地域内外とつながる拠点を創出。集落に賑わい呼び戻し、住み続けたくなる地域へ

 富山県立山町釜ヶ渕地区は、富山市の中心から車で30分程度のところにある田園地帯です。同地区では2021年度、農水省の「最適土地利用対策事業」の導入を機に、住民有志が耕作放棄地の解消を図る活動をスタート。22年度から同省「農村型地域運営組織形成推進事業」(以下、事業)の導入と併せて「釜ヶ渕みらい協議会」を発足しました。

 協議会には地区の自治振興会から農家、青年グループ、社会福祉協議会、移住者まで幅広いメンバーが参画。当時の振興会会長らの「農地だけでなく地域全体について話し合いたい」との思いを結集しました。事業の初年度(22年度)は「助走からスタート」を合言葉に将来のビジョンづくりと住民への共感づくりを進めました。

旧JA倉庫を改修して整備した交流施設「釜ノ蔵」。
住民がいつでも立ち寄り、語り合うスペースとして運営する

活動を住民に“見える化”し、交流施設も整備

「釜ノ蔵」の広い空間を生かし、住民の健康増進を図るヨガ講座も開講

 まず、地域の課題や将来像について住民を対象にアンケートを行い、得られた意見をもとに将来ビジョンを検討。コンサルタントのサポートも受けながら、①農用地保全、②地域資源の活用、③生活支援の3つ の課題別に活動内容を整理してまとめました。また随時、「協議会だより」を発行し、住民に回覧板で回して活動の“見える化”を図りました。

 取り組みの核となるのが「地域の拠点づくり」です。2023年8月に、住民が主体となってJAの旧倉庫を改修して交流施設「釜ノ蔵」を整備しました。地区内外の人々が交流する拠点として、祭りなどのイベントや農産物の直売、体操教室などの講座を開催したほか、移住者が施設内にカフェを開店して地域の食材を使った料理を提供するなど、コミュニティースペースとして稼働しています。

 こうした拠点を作ることで住民同士のつながりができ、「地域のために何かしたい」「地域を活性化したい」といった地域づくりへの思いの高まりという波及効果が生まれました。

 こうした思いが形になり、農業分野では、耕作放棄地を活用して農作業の体験農園を整備したほか、自然栽培米の試験栽培、農家民宿の整備などに着手しました。

 2024年度は、WEBを活用して地区の活動を広くPRし、農産物直売や軽トラ市の開催、農業体験や農泊の充実などを進める予定です。釜ヶ渕みらい協議会では、「地域に人を呼び込み、収益も上げて活動を継続できる体制を目指したい」と、持続可能な組織の在り方を見据えています。

キーパーソンインタビュー

釜ヶ渕みらい協議会事務局長 村井 一仁さん

地域の魅力を再発見して、フルに活用することで人が集まる地域に

 生まれも育ちも釜ヶ渕で、地元の団体に勤務していた私が協議会の立ち上げ時に参加を呼びかけられたとき、正直、「なんて大変なことを持ちかけられちゃったのだろう」と思いました。

 地域の少子高齢化や、耕作しない田畑が増えていることなどには気付いていましたが、この活動に関わるまではそれほど問題意識がありませんでした。

 スーパーや商業施設はなく、かといって典型的な田舎でもなく何もないような地域ですが、豊かな自然や食べ物をはじめ、そして何よりも農業の名人がいたり、配管屋のおばちゃんが驚くほど習字が達筆だったり(笑)、いろいろな人が住んでいるという魅力に気付かされました。

 この事業では、ビジョンづくりや倉庫の改修、コンサルタント費用といった準備段階に支援を受けられてとても助かりました。今後は活動を継続するために、この地域の魅力を多くの人に知ってもらい、少しでもお金を生む取り組みにつなげていきたいです。

 地域住民の居場所、シンボルとなる拠り所ができて、地域に一体感が芽生えてきたように感じています。古くからの住民だけでなく、移住してきた人たちの目線や発想も不可欠です。あらゆる人が「オール釜ヶ渕」の意識を持つことができれば、地域に賑わいが生まれ、明るい未来が見えて、人が集まる地域になると期待しています。